建築物は長年にわたって使用され、その間に法令が改正されることがあります。そのため、既存建築物には法令改正後の規定に合わなくなった部分が沢山あります。
そこで、建築基準法では存在する建築物や工事中の建築物については、新たに行われた法令の改正や地域地区の指定変更のうち、適合しない改正規定に限り適用しないという「不遡及の原則」を設けています。
既存建築物に対してその改正規定を全面的に遡及してしまうと、法令の改正や廃止または都市計画の決定・変更のたびに既存の適法な建築物が違反建築物になってしまいます。
そうなると、建築物の所有者などが被る経済的損失が大きく社会の混乱を招いてしまいます。
そこで、考えられたのが法的安定や既得権の保護の観点から「既存不適格建築物」の存在が容認されています。
つまり、既存不適格建築物とは現行法令の規定に適合していないが、従来の法令には適合しており、法3条2項の増改築を行うまではあくまで違反建築物ではなく、適法な建築物として扱われます。
しかし、従来の法令にも適合していない違反建築物は既存不適格建築物ではありません。
ただの違反建築物であります